16.決勝 遠江戦 甲賀者極まる

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『低めへの素晴らしいストレートが決まって1ストライクです。解説の山下さん。この甲賀高校の白烏くんのピッチングいかがでしょうか?』 『いやあ、素晴らしいですね。今のボールも151kmですか。しかも低めへの抑えの効いたお手本のようなストレートです』 『この白烏くん。まだ野球を初めてたった3ヶ月とのことです』 『えぇ? いやはや信じられませんな』  この実況席の声が聞こえた訳ではないだろうが、大野は白烏を睨み付けた。邪魔な存在だとばかりに。 「あいつ、睨みやがった。気合い負けしないように睨んだんじゃねえ。本気で睨んできやがった」  白烏は大野を睨み返したが、それに気付いた滝音が白烏を落ち着ける。大きく両手を広げ、白烏が気付いたところで、落ち着け落ち着けと両手を下に向けてゆっくりと動かした。白烏が睨みをやめて頷く。  気持ちを落ち着けて、しっかりと指にかけて投じたストレートは更に厳しいコースへ突き刺さった。  ストライィィィク!!  ピクリとバットを動かすものの、大野は際どいコースに手が出ない。大野は眉間に皺を寄せた。このピッチャーの評価を上げるわけにはいかない。
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