16.決勝 遠江戦 甲賀者極まる

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 浮き上がるようなストレートで、白烏と滝音のバッテリーはぐいぐい大野を攻めた。大野は必死で食らいつきファールに逃げていく。時折、内角から一気に外角すれすれまで曲がるスライダーを投じるも、大野は何とかスイングを止めてボール球は見送っていく。  確かに一流だな、と滝音は思った。今日の結人のボールは、ストレートのノビもスライダーのキレも過去受けた中で最上級だ。並みのバッターなら当てられない。ここは一つ、定石だが一番バッターにとっては厳しい攻めでいこう。 『結人、一球胸元……いや、顔付近にいくぞ。その後に外角低めいっぱいのスライダー。今日のお前ならいけるだろ?』 『無茶言いやがるな。俺は一昨日までストライク入らなかったピッチャーだぞ? 顔に当てたらお前のせいな』  ニヤリと二人で笑い、滝音は内角にミットを寄せた。  大野はその気配を感じ取った。内角にズバッとくるのか、はたまた仰け反らせる球か……。それならば、野球がなんたるかを教えてやる。
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