16.決勝 遠江戦 甲賀者極まる

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 白烏は大野にひけをとらないピッチングを見せていた。二回目の対戦となった大野に対してはシングルヒットを打たれたものの、後続を打ち取ることで、また難を逃れていく。  結局、緊迫の投手戦はあっという間に中盤の五回を終えた。  ここまで白烏は被安打2。いずれも大野に打たれている。四死球は3。それでもアウト15個のうち、既に10個の三振を奪っていた。  一方の大野はここまで何とパーフェクトピッチング。安打も四死球も許さない。アウト15個のうち三振は5個だが、それも大野ならではのピッチングと言える。  グラウンドの整備が行われている。  両軍の選手たちは、この時間を利用して水分を摂りながら、この投手戦からどうやって抜け出すかの話をしていた。  実況席では、実況、解説者ともに両投手のピッチングをべた褒めしていた。 『ここまで両投手の緊迫した投手戦が続いていますが、解説の山下さんはここまでの試合展開いかがでしょうか?』 『いやぁ、本当に遠江高校の大野くんと甲賀高校の白烏くん、どちらも素晴らしいピッチングです。遠江高校としては当たっている大野くんの前にランナーを置きたいところですね。対して、甲賀高校としては何とかランナーを出したいですね。今のところ糸口を見つけられていませんが、狙い球を絞っていくことが大事かもしれませんね』  おそらく、この中継を観ている視聴者やこの皇子山球場に集った観客は同じ感想だったろう。もしかしたら、これは決勝で完全試合が達成されるかもしれない。  そう思う者が多かった。  だが、今のところ、一人もランナーを出せていない甲賀ベンチは意外な反応を見せていた。
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