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滝音の隣で伊香保がうんうんと首を縦に振る。
「このセーフティスクイズは一点取れて犬走くんもセーフなら大成功。でも、アウトを取られずに犬走くんがセーフになれば、それでも成功だと思うの」
道河原は何が成功なのかよく分からず、首を傾げる。滝音が道河原が分かるように付け加えた。
「要するに、次の桐葉が必ず打つってことだ。それに……道河原、お前もな。その三番、四番の前にアウトを与えずランナーを貯められたから、成功と言える。そういうことだ」
そう言って滝音は笑った。道河原は少し嬉しかった。やはり準決勝で信頼してもらえたということか。それならば、四番としてこの試合でも打たねば。ネクストバッターズサークルに目を向けると、目を閉じて境地に達しているかのような桐葉の姿があった。
「おうよ。打ったる。この回、桐葉と俺で試合を決めたるわ」
「ああ、頼んだ! だけど、その前に月掛が打てないと簡単には諦めないだろう。見物だな」
滝音と伊香保、道河原が月掛に目を送る。月掛の身体が燃えているように映る。三振しても良いから……滝音がかけたその言葉に負けず嫌いの月掛が燃えない訳がない。まあ、それも、滝音の戦術のひとつなのだが……。
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