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もはや、チームになっていないな。準決勝の滋賀学院の方がよっぽど骨が折れた。
打席に向かう道河原は、目の前にいる遠江ナインに沸き上がる感情を持つことはできなかった。
1アウト二塁。4-1と、一気に3点リードとした甲賀は、ここで決勝進出の立役者である道河原がどっしりと打席に入った。
遠江にとっては、先ほどベンチから久保田が叫んだように、ここを集中して抑えなければ試合の趨勢が決まってしまう場面だ。だが、既に遠江の糸は切れてしまっていた。
初球だった。
大野は道河原へ不用意な球を投じる。大きく道河原がバットを引く。豪快なスイングが、大野の投じたボールへ襲いかかる。そのスイングはまるでピンポン球を打ったかのように、大野の球を軽々と跳ね返した。
ガキキィィィィィン!!!!
打たれた大野、守る遠江ナイン、誰も打球の行方を見ることはしなかった。道河原が放った打球は、瞬く間にショート、レフトの遥か頭上を越え、レフトスタンドにちらほら座っている観客たちの頭上も遥かに越え、場外を突き抜けてやがて見えなくなった。
道河原はつまらなそうにダイヤモンドを回った。甲賀ベンチ、三塁側のスタンドが盛り上がる中、感情を失ったような遠江ナインたちの隣をすり抜けていく。
桐葉が本塁を踏み、殊勲者の道河原を待つ。ゆっくりと本塁を踏んだ道河原に桐葉が手を差し出す。甲賀の誇る強力な三番、四番コンビが小さくハイタッチを交わした。
甲賀6-1遠江
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