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『マ……マ……』
赤子は、血の涙を流し始め、こちらにじりじりと近づいてくる。
「いや……来ないで……来ないでよ……この化け物!!」
そう叫んだと同時に、獏は部屋中に響き渡るほど大きな音を立てて、私の頬を叩いた。
そして、表情がいつもの笑顔に変わる。
「おっと失礼、虫が居たので、つい」
どう考えても嘘だ。
だが、突然に行動に言葉がまとまらず中々声に出せず、私は酸素を求める魚のようにただ口をパクパクと動かしてしまった。
「この赤ちゃんはね、お母さんを心配していたんですよ」
獏は、いつもの優しい声に戻り、血まみれの赤子の頭を優しく撫でた。
「流産の罪悪感から、自分の殻に閉じこもり、何もかもを拒絶してしまう貴女を見て、励まそうとした。
でも、貴女の中にある不の感情があまりも強い為に、この子はこんな姿であなたの前に姿を現してしまった。
夢は、潜在意識の現われともいいます。貴女は、自らの思い込みで悪夢を作っていたのですよ」
獏は、そういうと赤子の額に優しく口付けをする。
すると、赤子は突然淡く光り始め、血が蛍の光に変わり空へと消えていった。
薄暗い部屋には光が差し込み、そこには愛らしい赤ん坊がまん丸な瞳でこちらを見ている。
「これが、本当の姿ですよ」
獏はそういって、赤子を抱き上げると、私の腕の中にゆっくりと渡してきた。
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