夢探偵

3/15
8人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
なんで、こうなってしまったのだろうか。 結婚すれば、幸せな家庭が待っていると思っていたのに、それもこれも、全てがまるで夢の様に消えてしまった。 そして、当の夢はというと、相変わらずのあの悪夢だ。 正直、現実も夢もこの調子では、流石にきつい。 そう思いながらも主婦である私は、部屋の掃除を済ませ、ポストから手紙を取り出して部屋に戻った。 電気代、ガス代など様々な請求書と一緒にスーパーの広告のチラシなどが入っていて、それらを見ながら、必要なお金の計算をして行く。 「あら?」 ふと、様々なチラシの中に紛れて、真っ黒なA4サイズのチラシが目に止まる。 そこは“夢探偵事務所”と、白抜きで文字が大きく書かれていた。 他には“悪夢にお困りの方は、こちらまでお問い合わせ下さい”とあり、住所と電話番号が書かれているだけのシンプルなチラシ。 「……」 胡散臭い、何かの怪しげな宗教の勧誘や、怖い事務所ではないだろうか。 そんな事が真っ先に思い浮かんだが、チラシは何故か自分の手から離れない。 思い出すのは今朝の悪夢。 もし、コレが私の考えすぎで本当に悪夢を解決してくれる場所だったらどうしよう。 アレがなくなれば、今の生活も少しは楽になる。 そう思ってしまうと、今度はソレが救いを差し出す手にも見えてしまう。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!