朝マヅメの語らい

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(俺が規格以上にできる上司だったら、すべてが問題なかったっていうわけか。ふざけんな)  餌木を引き上げて、もう一度ロッドをしならせる。緩やかなカーブを描きながら飛翔していた餌木が、深い海の底に沈んでいく。  心の中でため息を落としたとき、背中に人が近づいてくる気配を感じた。 「調子はどうですか」  ふいにかけられた聞き覚えのある声に、橋爪は驚いて振り返った。 「神長氏」  偶然釣り場がかぶったのかと思ったが、そういうわけでもなさそうだった。 ライトグレーのクレリックシャツ上に紺のジャケット、足元は革靴だ。とても釣りをするような服装ではない。わけが分からずにぽかんとする橋爪の横に、神長がしゃがみこんだ。 「おはようございます。今、佐島のほうから、何箇所かポイントを回って様子を見てきました。ここ一週間くらい、アオリはもう少し南のポイントの方がよく釣れていそうですよ」 「なんでわかった」 「潮の流れや水温の関係もあるのではないかと――」 「いや、そうじゃなくて」橋爪は神長の言葉を遮った。 「場所だってはっきり伝えてねえし、家から遠くないにせよ、寄るっていうような時間じゃねえだろうに。神長氏は今日、釣りするわけじゃねえんだろ」
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