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「釣り場、もし人の集まっている方に移動するなら、車で先導しますけど。今ならまだいい場所が取れますよ」
「いや、とりあえずここで様子見るわ。人が釣れてても俺が釣れるわけじゃねえし、朝は静かに過ごしたい」
「そうですか。わかりました」
「悪いな、せっかく回ってきてくれたってのに。土産にアオリの一匹でも渡してやるからちょっと待ってろよ? 取引先にもってくといい」
神長は笑いながら立ち上がり、腕時計を確認する。
「実は今からホーチミンに行くんです。ですから、イカはまたの機会でお願いします」
「ホーチミンって……、ベトナムかよ。まさかオフショア開発でもやってんのか?」
「はい」
オフショア開発といえば、炎上必須の難プロジェクトというイメージしかない。工程の一部、プログラミングやテストの部分を人件費の安い国に下請けする方法だが、言葉やビジネスに対してのやり方、価値観の違いにより、上手くまとめることが難しい。
仕様があらかじめ完全に決まっている場合には、短期間、低コストでの納品が大きなメリットになるのだが、おおもとの発注先から仕様変更があった場合が最悪だ。対応しきれない。橋爪の周りに直接の経験者はいないが、苦労話だけは有名だ。
「おいおい、大丈夫かよ」橋爪は神長を見上げた。
「今のところ、なんとかやってます」
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