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「内容を突っ込んで訊くわけにもいかねえし、訊いたところで俺にどうこうできるわけじゃねえから、無理するなよ、としか言えんが。俺みたいにこうやって、鬱憤晴らす暇もねえだろ」
「週末はときどき、まきさんが泊まりに来てます。最近はそれがちょっとした楽しみですね」
なるほど、と橋爪は深く頷いた。
「仕事の愚痴大会っていうわけかよ。坂巻もそこでストレス発散か?」
「心配ですか?」
「ああ? 別に何を言われようがこっちは構いやしねえよ」口調を荒げると、神長は手のひらを向けてきた。
「いえ、そういう意味では。まきさんがストレスを溜めているんじゃないかと、心配しているのではないかと思ったので」
「何でそうなる」
「違いますか」
橋爪は黙り込んだ。
咄嗟に否定の言葉が口をついたが、考えてみれば、確かにそういう部分がないわけでもない。坂巻のやることがいちいち気になる理由に、いろいろな要素が複合しているのは間違いない。その中に、心配する気持ちも混ざってはいるだろう。五パーセント程度は。
「神長氏。付き合った女を、泣かせてよがらせて、穴かっぴらいて、本人ですら見たことのない部分まで、すべてを知りつくさないと気が済まないタイプだろ」
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