朝マヅメの語らい

23/37
前へ
/37ページ
次へ
「どんなタイプですか、それ」  神長は否定も肯定もしないまま、肩を揺らして笑っている。 「でもまあ、そうやって解剖されんのも嫌いじゃねえよ。どうぞ好きにやってくれ」  橋爪は片手でロッドを押さえながら、もう片手を大きく広げてみせた。  心の壁をするりと通り抜けて、奥に沈んでいた感情や思考に触れられる感覚は、恐怖や不愉快さも伴う。だが、一周回って開き直ってみると、これほど楽な相手もいないのではないかという気さえしてくるから不思議なものだ。  明けていく空と潮の香りが、釣り好きという仲間意識を連れてきてしまうせいもあるのだろう。あれこれ気をもみながら接するほうが馬鹿馬鹿しくなって、素直にならざるを得なくなる。 「神なだけに、何でもお見通しか。どうやったらそうなれる」 「AI開発がおすすめです」 「これまた、生粋のエンジニアだな」 「冗談ですよ」神長は笑った。  何も言わずとも、自分の心に嘘をつき正反対のことを言おうとも、ほぼ自動的に本音を見抜いて理解してしまうのが神長なのだろう。通常それを他人に望むのは高望み以外の何ものでもないが、そういった気兼ねすらこの男には必要ないのかもしれない。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

62人が本棚に入れています
本棚に追加