壊れた心

6/9
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/41ページ
「………千佳?………」 さっきの貴方の声が、耳から離れない。 今は、今だけは 貴方の顔をまともに見ることは出来ない。 眠るんだ、とにかく、一秒でも早く。 早く。 「ガチャッ」 貴方が戻ったのは、それから30分後くらいだった。 ベットの軋む音とシーツの擦れる音、 自分の体が、少しだけ沈みこむのが分った。 枕元のナイトテーブルに何かを置いた気配。 「ピロリン」 充電を開始する電子音が静かに響いた。 貴方に背を向ける様にして眠る。 何を話していたの? 涙が頬を伝う。 そんなに長く………。 嗚咽をもらしてはいけない。 貴方が布団をかぶって横になる気配。 気付かれては駄目だ。 長いため息をもらす貴方。 気付いては、駄目なんだ。
/41ページ

最初のコメントを投稿しよう!