6限目

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「あ、あれは! 咄嗟に叫んだだけで…!」 「じゃー僕の事、どう思ってるの?」  ネクタイをさらに引っ張り、唇が触れそうなくらい近づいた。  だけどそこに笑顔はない。瞬きもせずに俺を見つめてくるその大きな目は、ある意味ホラーだった。 「ど、どうって……」 「なんとも思ってないのに『俺のまどか』なんてセリフはないよね? 咄嗟に叫んだ? それって誰にでも同じこと言うってこと?」 「いやそれは誤解だって! まどかだけだ!」  あれ。  なんだか……どんどん墓穴を掘ってるような?  まどかは「ふうん?」と疑っているようだった。 「ちゃんと言ってくれなきゃ、わかんないなー。はい、りぴーとあふたーみー『俺は』」 「お、れは……」 「『まどかだけのモノです』」 「まどかだけのモノ……です……」  え? なんだこれ?  言われるがまま同じセリフを繰り返して、俺は固まった。  なんか、いま、凄い事言わされなかったか?  だけど、その言葉を聞いた途端、まどかの表情はいつになく嬉しそうに、ぱあっと明るくなる。  小さな細い手は俺の頭を撫でた。 「わぁ、お兄ちゃん偉いっ! よく言えましたー! じゃあ今日から、お兄ちゃんはまどかのモノね!」 「……は!?」 「自分で言ったんだよ? ちゃんと責任持たないとね。はい、ご褒美にチューしてあげるーっ」  まどかはネクタイをぐいっと引っ張り、ギリギリまで近づいていた顔をくっつける。  そのまま3秒くらい……  俺たちは公園のど真ん中で唇を重ねていた。
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