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負けじと男に蹴りを入れる。 細身のその身体は思ったより弱く、フラフラっと退いた。
「警察呼ぶぞ! ゴラァ!」
俺がそう怒鳴りつけると、男は舌打ちをし、その場から走り出した。
制服だから舐められたのだろうか。俺だってそんなやわじゃない。
男が見えなくなるのを確認して、それからまどかの側にしゃがみこむ。
「大丈夫!? 怪我してないか!?」
まどかは尻餅をつき、うつむいていた。
顔を覗き込もうとすると、突然俺のネクタイを掴み、自身の方に引っ張った。勢いに負けて、ドサっとまどかの方に崩れ込む。
「いってぇ……な、なんだよ、まどか……」
「誰が……」
「え?」
「誰が『俺のまどか』……なのかな?」
まどかは、真顔でそう言った。
……どうやら、俺のセリフが気に入らなかったらしい。
俺は、尻餅をついたまどかの上に四つん這いの状態で覆いかぶさっている。周りの人に見られたら、まるで俺がまどかを襲っているようだ。
「いや、え、ちょ、まどか、一回離して……」
「僕が聞いてるんだけど。ねぇ……ちんちん蹴るよ」
まどかのスニーカーの先が、俺の股間に当てられる。
やばい、こいつ、まじで蹴るつもりか……!
「お、おい、やめ……」
「訂正するなら今のうちだよ」
スニーカーの先がスーっと前後に動く。
情けなくも、俺はうろたえてしまった。
「あッ! す、する! するから! 動かすな!」
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