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それから数日後。
あの大騒ぎの元凶、痴漢野郎は無事捕まったらしかった。
警察による囮捜査を行なった結果、まんまと姿を現したそうだ。
「はー、これで痴漢騒ぎは一件落着だな!」
「……ああ、そうだな」
「ほのかちゃんとまどか君を守りきった淀橋を褒めて讃えよう」
「さりげなく名前呼びしてんじゃねーよ」
そして、野嶋とほのかは、以前よりも距離を確実に縮めていた。
ほのかは野嶋を『篤史くん』と呼び、 野嶋はほのかを『ほのかちゃん』と呼ぶ。
まあ、ふたりが仲良くするのは、別にいいんだけど。
「で、痴漢野郎ってどんなやつだった?」
「えー……なんか細身で、身長高くて……髪の毛はボサっとしてて……浮浪者みたいなやつ」
「こっえー。よくまどか君が泣かなかったな……」
ほんとだよ。むしろこっちが泣きたかったわ。
なんて、絶対野嶋には言えないけど。
「あ、あと、口髭が気持ち悪かった」
「あー口髭な。昔さー親父が口髭生えてて、ジョリジョリーってされるのすっげぇ嫌だったな」
「あーわかるわかる」と相槌を打ちながら、俺はふと考えた。
口髭……ジョリジョリ感……?
首元を噛まれたあの時、そんなもの感じただろうか。
数日でそんなに伸びるとは考えにくい。
とすると……
俺は、誰に襲われた?
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