恒星

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 彼が拡散した道筋の恒久性を考えに入れて、原因も結果もない流動的な可視世界を見詰めていると、音もなくしかし明らかに音であるものが近づいて来た。計測器のメータはとうに振り切っていた。曖昧なものは何もなかった。  恐らく、危険な行為を犯す時、鼓動は扇状に広がっている。そして現在その危険性にまつわる夢は過去の印象を捨てて機能を果たしはじめていた。  一方、人間の思考の可能性を慎重に排除しながら収縮を繰り返す人形の瞳孔は幸福な二次元に帰ろうとしていた。  二つの運動が実は連続した一つの運動であることを知るものは僅かだった。  ある雨の日、その雨が鬼神の頭に降り注いだ時、大陸の東端では三人の戦犯者が処刑された。全てが、ある一つの粒子を共有していた。どんな物にでもその粒子は一つだけ、含まれていた。鬼神がその力を振るう時、粒子は一斉に光り輝き、互いに寄り添おうと振動するのだった。それはどんな震えよりも強く、そして肌に感じるあらゆる感覚よりも微弱だった。戦犯者の血液に抜け出した粒子は五分と経たない内に巨大な結晶を作り出し、彼らの首を一つずつ宙に掲げるように突き出した。鬼神はそれらを順々に丸呑みにすると、自らを素粒子レベルにまで分散させ、大陸を渡り、海と同化した。次の瞬間、ある崖の麓では海水を一杯に吸い込んだ溺死体が密かにうち上がっていた。
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