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「危ないよ」
背後から降った声は優しく耳をくすぐる。男の人の甘い声だ。私は突然の事に身体ごと固まる。
「じっとしてて」
私の手の真上に一回り大きな手が置かれる。お父さんの手とは違う、骨張った硬そうな手だ。
「手、離して」
「は、はいっ!」
慌てて手を離すとその本はするりと本棚を抜ける。
「はい、取れたよ」
男の人が私の手に本を乗せた瞬間、心がもぎ取られる。私を見下ろして穏やかな微笑をしている彼に目が釘付けになった。
一目惚れだ。初めての感覚ながら、それは確信だった。
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