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「太宰?」
彼は目を丸くする。
「彼女『太宰和華』っていうんです。如何にも文学少女っぽい名前なのに」
やかましいわ! 私は顔を赤くして早苗に怨念を送る。
「へぇ、そうなんだ。いい名前だね。太宰さん」
「はっ! はい! 太宰治の子孫とかじゃ、無いですが!」
不意に名を呼ばれ、私の心はバネのように跳ねる。
「太宰さんは本読まないの?」
「は、はい……! 今日も彼女が借りたい本を代わりに借りる為に来たんです……」
無教養と呆れるかもしれない。今私は激しく後悔している。本を全く読まなかった半生を!
しかし先輩はてらいなく微笑み本のタイトル部分を指差す。
「へぇ、でもそれ、結構面白いよ。気が向いたら読んでご覧よ」
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