一章

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「太宰?」 彼は目を丸くする。 「彼女『太宰和華(だざいかずか)』っていうんです。如何にも文学少女っぽい名前なのに」 やかましいわ! 私は顔を赤くして早苗に怨念を送る。 「へぇ、そうなんだ。いい名前だね。太宰さん」 「はっ! はい! 太宰治の子孫とかじゃ、無いですが!」 不意に名を呼ばれ、私の心はバネのように跳ねる。 「太宰さんは本読まないの?」 「は、はい……! 今日も彼女が借りたい本を代わりに借りる為に来たんです……」 無教養と呆れるかもしれない。今私は激しく後悔している。本を全く読まなかった半生を! しかし先輩はてらいなく微笑み本のタイトル部分を指差す。 「へぇ、でもそれ、結構面白いよ。気が向いたら読んでご覧よ」
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