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彼は颯爽と図書室を出て行った。よく見ると何冊かの本を抱えているので読書家なんだろう。
「和華? 何ぽけーっとしてんの?」
「……早苗、あの人誰か知ってる?」
早苗は廊下を歩く先輩を窓から顔を出して覗き込む。
「知らないよ? 先輩だね。二年生の上履きだから。あ、文芸部の教室に入ったよ」
「……私文芸部入る」
早苗は素っ頓狂な声を上げる。
「嘘? 国語はいつも通知表3で短編小説一つ読まない和華が!?」
「仕方ないでしょ恋なんだから!」
この胸の高まりに気付かないフリをすると、絶対に後悔する。私の頭は、いや、本能が、そう判断していた。
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