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愛しているよ、とあの人は言った。青白い顔で私の目を見つめながら。
私は涙を我慢して、私もよと笑った。
あの人は日に日に痩せていった。この時代には、あの人を治せる医者も薬もなかった。
私はただあの人の側に居ることしかできなくて辛かった。
それからしばらくしてあの人は死んだ。冬を越すことはできなかった。
もう一度桜を見ることがあの人の願いだったけれど、叶わなかった。
だから私はあの人をこの木の下に埋めることにした。
あの人は本当に桜が好きだった。
大好きな桜の元で眠ることができるなら幸せだろうと私は思ったのだ。
やっぱりあのときあなたの後を追えばよかった。
私は舞い落ちてきた桜の花びらをぎゅっと握りしめた。
あの人は私に生きて欲しいと言った。
あなたの言う通りにして長い間生きてきたけれど、一人は寂しい。
私を知っている人達はもうみんな死んでしまった。
あれから何百年経っただろう。私は今も自分で死ぬことができないままいる。
それは生きていたら、あなたにまた会えるような気がするから。
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