ココロソメラレテ

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 区役所の近くまでやって来て私は異様な光景を目にした。 大勢の人々が警察に囲まれながら、列を作って旗を持ったり、ボードを持ったりして歩いている。これはデモ行進というものだろう。 私はこの目で実際に見るのは初めてだった。 ボードには桜の絵が描かれていて、「桜の木を守ろう」の文字。そうか。ここに居る人達は皆、私と同じ事を思っているのね。 例え理由は違えど、思いは一緒。私もその列に並び、声を上げて区役所に訴え始めた。    一時間くらい経つと、デモが終わったのか皆ぞろぞろと帰って行く。 気付けば私一人になっていた。自分たちの思いは伝わったのだろうか。 私はそれが気になって、職員に尋ねようと区役所の中に入った。 私は歩きながら帽子を深く被り直すと、職員らしき人に話しかけた。 「桜の木は保護されることになりましたか。」 「桜・・・?あぁ、あの広場の。残念ながら私達にはどうすることもできませんよ。もう 決まったことなんです。」 「そんな・・・。あんなに大勢の人が訴えたのに何もしてくれないのですか?」 「私に言われても困ります。もうあの件は諦めた方がいいですよ。」 私は職員の立ち去ろうとする腕を掴む。 「待ってください。あの桜には大事な、大事な思い出があるのです・・・っ。お願いします。何でもしますから、あの桜だけはどうか・・・。」 「は、離してください!ちょっと、そこの警備員さん!この人、つまみ出して!」 私は警備員二人に取り押さえられて、そのまま外へと運ばれる。 私は必死に抵抗するも虚しく、二人の警備員に投げ出された。 何も言わずこちらを睨み付ける二人。私は邪魔者なのだろう。 私は立ち上がると、膝を払ってその場を後にした。
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