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痛みを感じない体。私はベンチに座り、先ほど投げ出されたときに擦りむいた膝を見つめていた。血は出ているのに、何も痛みを感じない。
そんな私だが、心の痛みは普通に感じることができる。そう、今だって。
桜を諦めなければいらないことに私は心が痛んでいる。
自分が何も出来ない事に痛みを感じている。
私は涙を堪え、立ち上がると行く当てもなく歩き始めるのだった。
またここへ来てしまった。あと数日でこの桜は散ってしまって、誰もここへ来なくなるだろう。春の間だけ賑やかなこの広場。今はあの人も寂しくないはずだ。
だが桜の木が無くなってしまったら。
私は恐ろしくなって考える事を止めた。
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