微熱花火

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「その顔は、誘ってるようにしか見えない」 「ちちちち、ちがいますーっ! 今の私にそんなレベルの高いこと無理です!!」 「レベルって。 ……じゃあ、今日のところはこれくらいで」 先輩はそう言って、私の右手をきゅっと掴んだ。 そのまま優しく手を繋いでくれる。 少ししっとりした、私よりも大きな少し冷たい手。 夢みたい。 急に実感が湧いて、頬がますます熱くなる。 手を繋いだだけで、その手の一部が先輩と同化したみたいに思えるなんて。 「先輩、後悔しないでくださいね。私を彼女にすること」 「お前もな。鬼かと思ってももう遅いからな」 「実は既にそれちょっと思ってました」 ははっ、と笑って先輩は空を見上げる。 「花火、また来ような」 「はい!」 夜空に踊る花火の幾筋もの光。 あのジンクスは本当なのかもしれない。 こんな綺麗な光景を好きな人と見られたら、幸せなことこの上ない。 私以外の誰かもこうして願いが叶っているのだろうか。 先輩に繋がれた手がどんどんどんどん熱くなっていくのを感じながら 私はこの恋を、ずっとずっと大切にしようと思った。 ジンクスが本物になるように。 ~END~
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