微熱花火

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それはいつか来ると分かりきっていたことなのに こんなに早くその時が来るなんて。 やっぱりこの2週間は、夢だったんだと思い知る。 「…………わかりました」 そう返事するので精一杯だった。 でも、せっかく目的が達成されたというのに 私といなくなったら、別れたと思われて元の木阿弥なんじゃないのかな? ちら、と先輩の横顔を盗み見てみる。 ところが、盗み見た顔は横顔ではなく、まっすぐ私に向けられていた。 盗み見どころか、ふつうに目が合ってる状態だ。 「ずいぶん素直に言うこと聞くんだな」 そう言う先輩の片眉は下がっていて、心なしか寂しそうな瞳をしている。 頭上では花火がバンバン上がり、先輩の瞳にその煌めきが映り込む様に見惚れながら どうしてそんなことを言うんだろう、と胸がギュッと痛んだ。
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