お局美智 Ⅲ ―――Ｙｏｕ‘ｒｅ ｆｉｒｅｄ―――

鬼のかく乱

休日中のファイルは、役員たちのものを除けば木村の自殺未遂事件の噂話がほとんどだった。役員たちは福島に遠慮してか、事の真相を薄々知っていながら福島を問い詰める声はない。『依願退職を求めるか……』『それは反感を招くだろう。設計課か管理課に異動させては……』と、木村の処遇を話すものが多かった。そんな中、木村が意識を取り戻したあとの親子の会話には気が抜けた。

『佐久間さんのおかげで、お母さん助かったわ。あんな女性が義弘のお嫁さんになってくれたらいいんだけど』

『あの娘(こ)は、陰でお局美智と呼ばれているんだぞ。経費申請書をゴミ箱に投げ捨てられた社員もいるんだ』

木村は自分がされたことを他人事のように言った。

『そんなの噂話でしょ。佐久間さんをお嫁にしなさいよ。多少、薹(とう)が立っていても、義弘にはああいう女性の方がいいのよ』

「はっきり言うのね」

美智は苦笑し、次のファイルに移る。