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『会社が増収増益を目指すのはかまわない。しかし、数字は目標や結果に過ぎない。社員の喜ばない会社など、いずれこの世から消えてしまうだろう。……労基が入ったから言うわけではない。雇用は大切な社会貢献だ。1人当たりの経営指標が悪いことなど恥じるな。仕事に必要なだけの人を雇い、残業を減らしてはどうか。私が言いたいのはそれだけだ』
会長の話しの後、社長が派遣社員の希美を正社員として採用すると話し、他部署においても必要な人材がいたら人事課に申告するようにと命じた。業務改善会議の設置などの話しがその後も続いたが、それらは美智の耳に残らなかった。
役員会の後、工事現場で福島と木村が話す音声ファイルがあった。
『木村君。私が悪かった』
福田の真摯な謝罪があった。
『頭を上げてください』
福田を許す木村の声があった。
二人の短い会話に美智は感涙する。NOMURA建設に、再び平穏な日常が戻ると思った。
「会長、ありがとうございます」
パソコンに向かって礼を言ってから、電源を落とした。
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