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「美智さん。残業の件、何かいい方法はないですか?」
「私にきかれても……」少し考え、「こんなことに口を挟めるのは監査役ぐらいかな。それより、労基の方が効果的かしら。日本人は外圧に弱いから」と話した。
「労基?」
皐月が首をかしげる。
「労働基準監督署よ」希美が教えた。
「そんなのがあるんですね」
希美が労働基準監督署の仕事を説明していると、「おいおい」と総務課から三井の声がした。
「冗談でもそんな話はやめてくれよ。労基なんかに調査に入られたら僕も工藤課長も困る」
「三井課長、そうなんですか?」
皐月がとぼけた声をあげた。
「法律関係のことを担当しているのは総務課だからね。何よりも役員たちが騒ぎ、工藤課長は責任を問われるかもしれない」
労働基準監督署に会社が責任を問われるなら、それは間違いを犯したからだ。それを不幸のようにいう口調は、美智を少しばかり失望させた。
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