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始業時刻は午前8時30分で、8時を回った頃から経理課や総務課にも人が集まりだす。三井が出社すると間もなく、容子も顔を見せた。
「おはよう。みっちゃん、早いのね」
昨日、早く帰宅した容子は元気だった。
「おかげでクレームの電話を取る羽目になって仕事は進まないし、散々でした」
「それは運が悪かったわね」
容子はアハハと笑った。
仕事を持ち帰れと示唆した容子が意気揚々としているのに、自分は早朝に出社してクレームの電話を取った。それを運という言葉だけで片付けるのに、美智は納得がいかなかった。けれど、「我慢、我慢」と自分に言い聞かせた。感情を露わにして、爽やかな朝を台無しにしたくはなかった。
プルルルルル……、と総務課の外線電話が鳴る。
クレームで怒鳴る声を思い出した美智が総務課に眼をやると、出社したばかりの三井が電話を取った。
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