187人が本棚に入れています
本棚に追加
「職人が落ちたって!」
三井の声が社員の視線を集める。工事現場で転落事故が発生したのだ。騒音クレームどころの問題ではなかった。
美智は、三井が事故の詳細を聞きとる間に仮払金の伝票を作成する。
金庫を開けると「みっちゃん、何をするのよ」と容子がきいた。
「現場の事故です。総務課が対応に当るのにお金が必要になる可能性があります」
応えながら金庫から10万円ほど取り出した。
仮払金を三井の元に運んだ時には、電話は終わっている。
「仮払金です。ここに判子を下さい」
三井の前に伝票を置き、彼が判子を押している間に机の上のメモに目を走らせる。事故の現場は、クレームの電話があった工事現場だった。電話をいれてきたのは木村なのだろうと思った。
木村と職人との間に何かがあったのだろうか?……胸の奥でもやもやするものが蠢いた。
最初のコメントを投稿しよう!