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イキイキ・タイムでサービス残業の話題になった時、美智はあえて監査役を持ち出して希美が報告するように誘導した。希美と瑞穂がどんな行動に出るのか興味があったからだ。美智の期待通りに希美は報告したが、瑞穂は関心を示さなかった。彼女の頭の中も男の役員と変わらないのだと思った。
『そうですが……。あのう、数日前に派遣契約の延長がないと通告を受けまして……』
希美の本当の要件は、瑞穂の口から契約更新の口添えをして欲しいということなのだろう。
『私が人事に介入するわけにはいきませんね』
瑞穂の口調から2人の関係が想像していたほど密ではないと分かった。
「希美さんも大変ね」美智はつぶやく。すぐに次の仕事がみつかればいいけれど、地方都市に希美の希望する仕事は多くはないだろう。子供のいる希美の生活のことを思うと同情に絶えない。
「木村さんは、どうするのかしら……」
会社という小さな世界は問題だらけだと思うとため息が漏れる。小さな絶望と不安を胸の奥に抱えて帰宅し、眠りの浅い夜を過ごした。
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