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「そんなことないだろう。みっちゃんは、この会社のことも仕事のことも熟知している」
「それは三井課長の買い被りです」
「そんなことはないと思うけどな」
三井が美智を見つめる。
「絶対無理です。もう、今の仕事だけでいっぱい、いっぱいですから。ところで、内藤さんの件は、ありがとうございます。社長が口を利いてくれたのですよね」
三井の顔に諦めたような表情が浮いて、口元が少しだけ笑った。
「みっちゃんが強く勧めたからだよ。会長の後押しもあった」
「保育所の件も上手くいくといいですね」
「会長は本気みたいだよ。2年後には形にしたいと話していた。保育所の開設と成れば様々な申請も多いだろう。忙しくなるなぁ」
三井はぼやくように言って肩を落とした。
「私みたいに、倒れないようにしてくださいね」
「出来ることなら、私も入院したいよ」
言いながら、背中を向けた三井を美智は呼び止める。
「あのう……。空いている役員室の鍵を貸してもらえますか?」
「何に使うんだい?」
「事務所にいると客が多いので……。溜まった仕事を片付けてしまいたいんです」
「そうか。他ならない、みっちゃんの頼みだ。いいだろう。でも他の人には内緒にしてくれよ」
2人は廊下を引き返した。
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