切り切り縁舞

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   二人とも自衛隊に所属しており鍛えているとはいえ、時弥は百七十センチと小柄だ。しかし杜斗は百八十五センチでがっしりとした体格である。  どう考えても杜斗があの穴をくぐる事は無理だろう。  そもそも二人は京都に来る予定などなかった。ましてや、こんな神社があることも知らなかった。 「ごめんね……。姉さんの我が儘に付き合わせちゃって」 「別に」  ぶっきらぼうに答えた杜斗に申し訳ない気持ちで視線を外す。  時弥が正月休みに実家に戻ると突然、姉の茜が──「あんた、杜斗くんと京都に行っといで」  いつ調べたのかスマートフォンを手にして杜斗に電話をかけ始めた。まだ二歳の娘を夫に預けて戻っていた姉は、弟が落ち着く間もなく予定を入れたのである。  同期である杜斗は理由もわからず電話で勝手に京都行きを告げられて、断る間もなくいまこの状態だ。
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