待ち人来たりて花は咲く

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──いつから、そこにいたのか。 男と千万桜との間を割る様に、女が立っていた。 女といっても、十二単の様な着物姿に、地面につきそうな程の長く艶やかな黒髪。 今時の格好じゃない、という次元ではない。 明らかに普通ではなかった。 「なっ……お前…『何』だ!?」 突然の風に吹かれて、男の狂気は散っていた。 風と共に現れた女は男の問いに答えず、ただ穏やかな笑みを浮かべて男を見据える。 「お前、とは苦乃離(このはな)姉様に向かって失礼な…小物風情が!」 男に向かって、今度は厳しい怒声が浴びせられる。 だが目の前にいる女は口を閉ざしたままだったし、先程聞いた声とその怒声は異なっていた。 それが意味する事に男が気付いたと同時、着物の女の後ろから、また新たに別の女が姿を現す。 「千万桜を燃やそうとした事といい、苦乃離(このはな)姉様への無礼といい…なんと罪深い下衆か…!」 その女も着物を着ており髪も同様に長かったが、顔つきはまるで違う。 声のとおりの、きつく厳しく、そして凛々しい表情。 怒っているいないの差も多少あるが、最初の女とは正反対だった。 「怒らないで、呼ノ破失(このはな)。私は気にしないし…でも、あなたのそういう所は好きよ。」     
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