0人が本棚に入れています
本棚に追加
「……苦乃離姉様がそうおっしゃるなら。」
柔らかい口調で、二番めに現れた女─呼ノ破失を、最初に出てきた女─苦乃離が制する。
若干イントネーションは違うがそれぞれが同じ名前を呼ぶ、同じ着物を着た2人の女。異質な存在が増えた事で、男は更に動揺した。
「驚かせたかしら?ごめんなさいね。」
謝りの言葉とは裏腹に、狼狽える男に楽しそうな笑顔をしてみせる苦乃離。
そんな姉へと深く一礼して、呼ノ破失は奥へ脇へと数歩下がった。
すると、その奥から更に一つ、別の影が露わになる。
二度ある事は三度ある─よくあることわざだが、今この男にそんな予測を出来るわけが無い。
それは、追い討ちをかける驚異だった。
「ふふ。やっと待ち人現る、ですね姉様方!火熨華は嬉しいです!」
三番目に現れたのは、先の2人よりも幼さの残る少女。着物こそ同じだったが、髪も肩より少し長い程度で、背も少し小さかった。
彼女は男にも姉と呼ぶ2人にも、とびきりの笑顔を振りまいて無邪気にはしゃぐ。
「火熨華は呑気だな。千万桜が燃やされそうになったっていうのに…。」
最初のコメントを投稿しよう!