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「まあまあ。そこが火熨華の良い所でしょう?呼ノ破失。」
「ええ、そうですね。」
嬉しそうにとびまわる火熨華につられて、苦乃離と呼ノ破失の雰囲気も和らぐ。
だがそんな着物の女たちのやりとりも、男にはただただ異常なものでしかなかった。
彼女たちは人の姿こそしているものの、どう考えても自分と同じ人間ではない。
男の中では、とてつもない不安と恐怖が芽生えていた。
頭からは絶えず警告が発せられているのに、足が根を張ったかの様に、男はそこから動けない。
そうしているうち、はしゃいでいた火熨華がその動きを止めた。
「ねえ…千万桜を燃やそうとした人間なら、同じ事されても文句は言わないですよね?」
火熨華はどこまでも冷たい瞳で、どこまでも冷ややかな声を男に鋭くつき刺した。
先程までの笑顔など、もうどこにもない。
「は……?……え…?」
突然の豹変と、剥き出しにされた殺意。
男は本当に刺されたかの様に、ぱくぱくと口を動かし、僅かに声を漏らす。
「焦るな火熨華。」
呼ノ破失の一言と共に、男を再び強烈な風が襲う。
「───!!」
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