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それは先程よりも強力で凶悪で、男だけを狙って放たれた。標的は声をあげる間もなく飛ばされ、千万桜の太く大きな幹に打ち付けられる。
その様は、磔にされた罪人の様だった。
風の呻きの様な息を鳴らして、男はズルズルとその場にへたりこんでいく。
千万桜の木の下。
恐怖と痛みに震える男は、いつの間にか3人の女たちに囲まれていた。
「まずは、その血を千万桜に捧げてもらう。灰にするのは最後…それがお前の役目だ、火熨華。」
へたりこんだまま、男の足が地面を何度も削ってもがく。逃げたいのだろう。
「分かっています呼ノ破失姉様。早く刻んで、成れの果てを私に下さいませ。」
男の手が、情けを乞う様に千万桜へ縋り付く。助けてほしいのだろう。
「なんだよ……なんなんだよぉ、お前ら…!」
男はもう籠の中の鳥だった。
か細い声で震えて泣くしか、もう出来る事は無い。
「もう分かっているのでしょう?桜には死体が憑きもの…最近は有名ですものね。」
苦乃離が優しい声で、怯える鳥を追い詰める。
残酷な末路を突きつけられて、鳥は絶望し力を失くした。
「安心して下さい。私、苦乃離の名にかけて…苦しむ事なく、魂を離して差し上げます。」
震える事すら止めた鳥に、そっとそおっと、女の両手が近付く。
「…ただし。」
奈落から響いてくる様な低い声。
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