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二人は顔を見合わせると「なぁんだそんなこと?」と言った。
「いや、『そんなこと』じゃないよ? ホイップクリームが使えないじゃん!」
「大丈夫よ。ホイップクリームがなくても十分美味しいから」
くすくすと笑いながら、手元の生地を混ぜる朝ちゃんは、やっぱり天使だ。
「やっちゃん、ほんとーうに料理できないんだねぇ……」
小町はオーブンの予熱をしながら呆れたように言う。ほんとーうに、は余計だ。
今は放課後。私たち三人は、家庭科室にいる。『料理上手はモテるよぉ』『朝ちゃんだっているんだよぉ』とかなんとか言われ、結局小町に押し切られる形で私も料理部に入ることになったのだ。
そして記念すべき一品目が、ホイップクリームが乗ったカップケーキだった。……ホイップクリームはたった今なくなったけど。
たかがカップケーキ。されどカップケーキ。台所に立つのも初めてな私にとったら、卵一つ割るのも勇気がいることだった。
「でも大丈夫! ホイップクリームがない方が、持ち帰れるじゃん?」
小町がフォローにならないフォローをしている。そんな小町は、今日、カップケーキ作りを私と朝ちゃんに任せて、上に乗せるチョコレートでできた飾りを一人で作っていた。
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