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三十分ほどたっただろうか。父の「ほら、もう着いたぞ!」という声で現実に引き戻される。ハッとして外を見ると、目の前には三人で住むには大きすぎるほどの立派な屋敷が建っていた。
いかにも、な和風の木造建築で、築何年だろうか、かなり古そうだが傷んでいるわけではない。屋敷の両脇には大きな松の木が植えられており、まるでどこかの文化遺産か何かのような厳かな雰囲気がある。
「ねぇ、おばあちゃんって、お金持ちだったの?」
車のドアをバタンと閉じると、そんな感想が口をついて出た。父はそんな私の言葉にはははと笑うと、
「ここらへんは土地が安いからなぁ。このくらいの家が普通なんだよ」
と言い、家を眺める私を置いてさっさと中に入ってしまった。
絶対普通じゃないと思うけどな。まじまじと家を観察しながら私は苦笑する。やっぱりこんな家、見覚えがない。多分、いや絶対に知らないのだ。こんな立派な家、いくら小学生と言えども三年間も住んでいたんだ、普通は覚えているはずだ。なのになんで私は覚えていないんだろう。
「八重子~! 早く入っておいで~!」
父が私を呼んでいる。私は若干の場違い感を受けながら、恐る恐る門をくぐった。
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