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ピシリ。
また、あの音がする。
私は気づいてしまった。
その音がどこからするのか。
あれは家鳴りじゃない。
鳴ってるのは、私の体だ。
古い家がきしむように、古い体がひずんで音を立てる。
ピシリ。キシリ。
幻聴が私を呼ぶ。
「輝男や。おまえも、おいで」
「そうだよ。あと一回、眠ればいいんだよ」
「寝る子は育つって言うだろ?」
「次に目がさめたときには、おまえも……」
死んだはずの家族が、ニヤニヤ笑いながら手招きしている。
いやだ。眠りたくない。
眠れば、私はどうなってしまうんだ?
ピシピシと、体がきしむ。
何かが、そこから出たがっているかのように……。
了
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