【番外編 キャロル】

36/45
前へ
/249ページ
次へ
「和花菜」 「えっ」 スマホを持っている手を、くいっと引っ張られる。 「ね、俺のことも見て」 お互いの息遣いが、分かる。 「外の景色も綺麗だけどさ。スマホの画面ばっか見ていないで、こっちも見ろよ」 「……っ、る、みやさ」 ああ、この目は知ってる。 「んっ!」 柔らかい唇、ついで熱い舌が私のそれを絡めとる。 「……わ、かな」 狭い室内に、湿った成宮さんの声が反響した。 「ふ、っん……!」 息が苦しい、でもこの苦しさは嫌じゃない。淫らな水音に、耳も犯される。 そして不意に熱い体温と唇が離れていった。 「どうしたら和花菜の意識がこっちに向か考えて、やってみたけど」 正解だったな、なんて。 不敵に笑う彼に私は白旗をあげるしかない。
/249ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2271人が本棚に入れています
本棚に追加