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「ぅっ、だって……!」
バカみたいに涙が溢れてくる。
それを成宮さんが『あー泣くと目腫れるよ』と呆れながらも丁寧に拭ってくれた。
「はいはい、泣かないの」
「な、なっ泣きますよ」
「嫌だった?大勢の前で恥ずかしかった?」
「ち、がくて!幸せすぎて、もう、私なんかがいいのかなって」
ずっと燻っていた思いが、抑えきれずに口をついて出てくる。
「付き合ってから、お互い信頼し合って。大丈夫だって、分かってるのに」
ふとした瞬間、私が成宮さんの彼女でいいのか不安になること。
幸せな日常があるからこそ、逆に怖くなるんだということ。
今日だって何度かその感情が顔を出した瞬間があった。
臆病なんだ、私は。きっと学生時代なら、後先考えずにただまっすぐ前を向いて恋ができただろう。
でも大人になって、色々な経験をしたからこそ不安になることもある。
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