第15章 子を成す意味

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それはそれで、可愛らしいとも思える。 「それよりも、好いた方のお子が、私は欲しいのです。」 信志は、それを聞いて、目から鱗が落ちた気がした。 今迄の自分は、妃達が競って子が欲しいと言うのは、自分の確固たる地位を、誰よりも早く築きたいが為だと思っていた。 王に仕える妃達は、子がいるかいないかで、死に場所さえも天と地程変わってしまう。 祖父王や父王の妃達の末路を、身近で見てきたからこそ、そう分かるのだ。 好きな男の、子が欲しい。 それは、王である自分の妃になっていなければ、黄杏は故郷の村で、当然そのような人生を送っていたかもしれない。 それなのに、自分を好きになってしまったせいで。 自分が黄杏を、王宮に連れて来てしまったせいで。 女として、当たり前のような人生も、黄杏にはまるで宝石を探し当てる程、遠い夢のようになってしまった。 「ああ、そうだな。」 信志は、黄杏をぎゅっと、抱きしめた。
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