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「どうして謝るのだ。こんなにも、元気な御子を、産んでくれたと言うのに。」
信志は、紅梅の頬を軽く撫でた。
「よく……やってくれた、紅梅。」
「王?」
「よく……産んでくれた。感謝しても、感謝しきれない。紅梅、ありがとう。」
信志は涙ぐみながら、産まれた御子を抱きしめた。
「そうだ。御子の名を、決めなければな。」
信志は涙を拭くと、じっと御子の顔を眺めた。
「……明梅はどうだろう。」
紅梅は、手で顔を覆った。
「私の一文字を、授けて下さるのですか?」
「ああ。紅梅のように、美しくて強い女性になってほしいからな。」
紅梅は、うんうんとただ、頷くしかできなかった。
しばらくして、紅梅の父・忠仁も屋敷を訪れた。
「姫君でしたか。」
両手に抱いた忠仁も、涙目になっていた。
「紅梅を初めて抱いた日の事を、思い出します。」
信志にとっても初めての御子だが、忠仁にとっても、初めての孫がこの日、産声をあげたのだった。
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