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か、帰り道の土手で傘を振り回して殴られた。人通りの少ない道で本当に恐怖を感じた。その日は、這うように一人自宅に逃げ帰った。頭も傘で殴られ、朝目覚めても痛みがあった。でも、会社は休めないので、いつもと変わらず出勤した。会社の人には何も悟られないように仕事をしていたのだが、急に激しい頭痛と呼吸が苦しくなりその場に倒れこんだ。すぐに救急車で病院に運ばれたが、特に脳に異常はなく、過呼吸が起きただけだった。 エツと付き合っていることは会社の人も知っていたし、緊急連絡先を実家にしていなかったので 、病院にはエツが呼ばれた。病室に入ってきた彼は下を向いて暗い表情で、家まで付き添ってくれた。家に入ると土下座して昨日のことを泣きながら謝ってきた。 「あっ、これいつかも見たことある光景」 と心の中で思った。ハルキもそうだった。とは思ったが、やはりその場で簡単に別れを選ぶことはできなかった。あんなに暴力が嫌だったのに、流されてしまったのだ。 それからはまた一緒に会社に行くようになったが、ケンカも暴力も絶えなかった。その度にエツは自分の家に帰り、反省したら電話をかけてきた。 その日もたまたまエツとケンカして一人だった。 インターフォンが鳴った。オートロックだから、一階で鳴るはずが、それはドアの向こうからだった。
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