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「あと一本、あと一本」 1日2万は稼ぐと自分の中で決めていた。でないと、こんな仕事やってる意味ない。 留置所から釈放され、男が転がり込んでいたワンルームマンションに戻った。 「一人暮らしなんてやめて、実家に戻ってこい!」 壁が薄いマンションでは確実に隣に聞こえていると思う程の大きな声で怒鳴られた。でも、絶対にあの家にだけは帰りたくない。自分が悪いことをした、本当に迷惑をかけたとは思ったがこの人達との生活は私にとって地獄でしかなかった。 22歳の3月、地元では有名な私立大学を卒業した。 「就職は絶対に実家から通えない所で、できれば寮がついてるところ」 そう決めて受けた会社は全国にチェーン展開する飲食店の幹部候補。学生時代は彼氏と遊ぶか、バイトばかりの日々で、ほとんど学校に行かなかった私が、就職に関してだけは熱心に活動していた。超就職難の当時、真面目に授業を受け、真面目に就職活動している友達のなかで真っ先に最終面接まで進み、秋には内定をもらった。     
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