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戸惑うナミの返事も待たず、俺は全力で走り出した。
「美香先輩!美香先輩!!」
必死で呼びかけると、俺の存在に気がついたらしく、足を止めてくれた。
「ヤスタカ君」
「美香……せん、ぱい」
呼吸が乱れる。落ち着け。深呼吸だ。
「良一まくのに時間掛かっちゃって。ヤスタカ君と二人で会うってバレたら面倒だからさ」
「あ……そうですよね。すいません」
「話って?」
そうだ。呼び止めるのに必死だったけど、俺は告白するつもりだったんだ。
「美香先輩」
「……うん」
落ち着きを取り戻しつつあった鼓動が再び早くなる。
やっと、やっと言える。
「俺、美香先輩の事……」
言いかけたその時。
「ヤスタカッ!!」
俺を呼び止める声。
ナミだった。
「お前」
「もう何なのよ、急にいなくなって!わけわかんない!しかも何で美香先輩と一緒にいるわけ!?」
美香先輩に目をやると、落ち着いた笑みを浮かべている。
「じゃあね。ヤスタカ君」
静かにそう言い放つと、踵を返して、足早にその場から去って行った。
俺は黙ってその背中を見つめる。
その様子を見て察したように、ナミは押し黙った。
※
「ごめんね」
翌日、ナミは俺に謝ってきた。
「いや」
謝る必要なんてない。悪いのは中途半端な俺。
「あのさ、美香先輩はやめておいた方がいいよ……」
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