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珍しく慎重にそう切り出す。
「別に蒼井先輩から奪い取ろうなんて思ってねぇよ」
「あたし、美香先輩と結構話すから何となくわかるんだけど」
「え?」
「ここだけの話、美香先輩って結構色んな人と遊んでるみたいで……」
俺も誘われた、なんて言えなかった。
ってか、俺だけじゃなかったのか。
ヤバい。何か超恥ずかしくなってきた。と同時に湧き上がる嫉妬心。
何だよ。やっぱりすげぇ好きなんじゃん。
「ヤスタカ、あの時マジっぽかったからさ。大丈夫かなって」
「ははっ……」
乾いた笑いが漏れる。
全然大丈夫じゃねぇ。
「忘れた方がいいよ。それだけ。じゃ、また今度遊ぼうよ、ね」
ナミが去った後も俺は呆然としていた。
気が抜けて、すっかり告白したいという気持ちは失せていた。
『色んな人と遊んでるみたい』
遊びたいなら蒼井先輩と別れりゃいいのに。
『別れたら死んじゃうかもしれない』
美香先輩の言葉を思い出す。
それだけ蒼井先輩は美香先輩に惚れてるって事か。
体の相性以外はいいみたいな事言ってたもんな。
だから、俺が勝てる所っつったら。
スマホを取り出し、躊躇なく画面を打つ。
既読。
スタンプ。
『OK』の文字。
※
非日常感満載の部屋の中に陣取る、でかいベッド。薄暗いピンクの照明。鏡。
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