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そうだよ、俺が心配したところで何になる?
美香先輩は俺に何も求めてない。
「私、良一と結婚できて、ヤスタカ君の子供を産めて、幸せなの。二人とも好きだから」
「そうですか」
俺は、笑顔を作った。
見透かされてるかもしれないけど、とにかく笑った。
「じゃあ、ここで降りなきゃだから。バイバイ」
「さよなら。体、気をつけて下さい」
「ありがとう」
美香先輩も笑顔だった。
後部席に移り、歩道を歩く姿を見送る。
バスは再び動き出す。
姿が見えなくなったのを確認し、俺は、泣いた。
自分のふがいなさが情けなくて、死にたい気持ちになる。
彼氏になれないなら体だけの関係でもいいと思ってた。
でもやってみたら辛かった。だからと言って関係を断つ事もできなくて、最後には避妊しないで欲しいと言われて、流されるようにそうした。
自己嫌悪の波が次々に押し寄せて来て吐きそうになった。
何なの?俺。
※
春になって、地元から離れた大学に進学した俺は、真面目に付き合える彼女と出会う事ができた。
美香先輩の事は時間が解決してくれる。
忘れよう。全てうまく行っている。
それなのに。
そう、思い出すのはこんな時だ。
『藤中高校バスケット部同窓会のお知らせ』
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