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そして俺を見据える切れ長の瞳。
「やべぇ」
思わず声を漏らした。
ヘッドロックが解かれる。
「すいません」とショウが頭を下げ、俺も慌てて頭を下げる。
「あ、そうだ明日の部活急遽休みになったから。じゃあ」
用件だけ伝えると、足早に蒼井先輩は去って行った。
その後を付いていく美香先輩。
「いつ見ても理想のカップルって感じだよなぁ」
ショウが呟く。
俺だって同じこと思ってたわ。
蒼井先輩はイケメンで背が高くて、後輩の面倒見もよく、男の俺から見てもカッコイイ。
おまけに生徒会長で頭もいいときてる。
美香先輩は美人で、清楚で、古風というか、いつも蒼井先輩の少し後ろから付いていく感じで、でしゃばらず、男を立てるってこういう事なんだなって思った。
俺とは住む世界が違う人間。
二人は俺の中で特別な存在だった。
※
夏休み。
部活終わりのけだるい午後。
日陰が全く無いバス停での時間は拷問のようだ。
ようやく到着したバスに乗り込むと、部活の疲れと暑さでまいっていた俺は空いている席を探す。
視線を後部席に移した途端、俺は固まった。
美香先輩。
二人掛けの席に座っていてちょうど隣が空いている。
だから何だ?
空いてたって座れるわけねーだろーが!
こんな汗まみれの体で近づいたら失礼だ!
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