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来客
さて、どこからはなしを始めたものか……
とりあえず自己紹介はしておくべきだろう。
僕の名前は武水刀司。
流刻堂時計店という、小さな時計屋のアルバイトだ。
正直、アルバイトなんていらないような、日がな一日閑古鳥が鳴いているような店なのだが、この店のショウウインドウに飾られたハンドメイドの腕時計を見たことをきっかけに、僕はこの店でバイトを始めた。
やっている仕事といえば店内と店の周りの掃除、店番、そして、店主様に食事を作ることぐらいだ。
……最後のはなんかおかしい。
しかも、店番だって、カウンターに座って一日中本を読んでいるだけで終わることがほぼ毎日。
たまに来るのは問屋とかメーカーで、その相手もほとんど僕がやっている。まあ、伝票にはんこ押して、雑談するくらいなのだが……
「刀司、今日は作業するから11時まで声をかけるなよ」
そう声をかけてきたのが我が雇い主暮井紅子。
モデルのような体型と緑なす長くまっすぐな黒髪。そして、キツめの整った顔立ち……
正直、こんな時計屋なんてたたんでモデルにでもなった方がいいんじゃないかと思う。
「作業って……?」
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